アンドロイド・ニューワールド
「あれ以来、ずっとクラスメイトからは嫌われてる…。ううん、学年の全員から」

「…」

「修学旅行だけじゃない。毎年行ってる遠足だって、俺が行ける場所にしなきゃならないから、なかなか皆の希望が通らなくて、いつもつまらない場所になる。だから、皆俺と同じクラスにはなりたくないって思ってる」

と、緋村さんは言いました。

「それに、体育祭のクラス対抗リレーだって…。俺がいるせいで、俺のクラスはいつもビリ。車椅子だから特別な配慮が必要ってことで、先生達も俺のことを煙たがってる…」

と、緋村さんは言いました。

あの体育教師も、その一人ですね。

だから敢えて、彼を勘定に入れず、ひたすら見学だけさせていたという訳ですか。

「俺は皆から嫌われてるから…。嫌われて当然の人間だから…。そんな嫌われ者と一緒にいたら、久露花さんまで巻き込む。そんなことはしたくない…」

と、緋村さんは涙を堪えるように言いました。

「初めてだった。俺を気にかけてくれたクラスメイトは。俺の為に先生に食って掛かったり、俺が出来ないことを、出来るように工夫して考えてくれたり…」

「…」

「昼休みや放課後に、普通に話しかけてくれて…。こんな…友達みたいに接してもらったのは…。初めてで、凄く嬉しかった」

…と、緋村さんは言いました。

そんな風に思っていたのですね。

「君は優しい人だ。凄く良い人だ。その…ちょっと中二病が過ぎるところはあるけど、でもそれさえやめれば、君はまだ、他の皆と仲良く出来る」

と、緋村さんは言いました。

私は人ではなく、アンドロイドなのですが。

そして、中二病が過ぎるとはどういう意味ですか?

「俺みたいなはみ出し者の幽霊と、一緒にいたら…君の為にならないよ。だから…」

「私は、あなたを嫌ったことはありません。煩わしいと思ったことも、一緒に居て不満だと思ったこともありません」

と、私は答えました。

「あなたが幽霊だと思ったこともありません。足手まといだとは思いません。そして私の最終目的は、人間の感情を理解することであって、その過程において、私が他人にどう思われるかの評価など、どうでも良いことです」

「久露花さん…」

「あなたは今、私と友達みたいな接し方をされて、嬉しかったと言いました。そうですね?」

「え?それは…うん」

と、緋村さんは肯定しました。

それは良かったです。

何故なら。

「その言葉を聞いて、安心しました。それでは只今より私達は、お友達になりましょう」

「…え?」

「あなたは、私と友達のような関係を築けたことに喜びを感じています。私も、緋村さんと友達になることに不満はありません。なら、友達成立ですね。」

と、私は言いました。

彼相手に冗談を言ったこともありますし、秘密を話したこともあります。

友達の条件を、完璧に満たしています。

私に心はありませんが、もし心があったら、心の中でガッツポーズをしていたことでしょう。

仕方がないので、心の代わりに頭の中で、ガッツポーズをするとしましょう。

いえい。
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