傾国の姫君
第1話 失った家族
幸せな暮らしは、時に一瞬にして、崩れ去る。

私、孔心我の幸せも、その通りだった。


この国は、大陸の右側に位置し、交易も盛んだった。

それを治める秦王・神威は、人間不信で冷たい人だという。

だが庶民は、交易で儲かっていて、決して貧しくはなかった。

この、私が住んでいる、国の外れにある小さな村もそうだった。


「心我。精が出るね。」

「照葉さんこそ。」

隣に住んでいる奥さんの照葉さんと、こうして、野菜を育てるのも楽しい。

「お母さん。」

「どうしたの?正英。」

私には、3歳になる息子がいた。

名前は正英。

馬鹿親だが、正英は3歳にしては、賢かった。

数字を覚えるにも、誰より早かった。


「お父さんが、帰って来たよ。」

「あら。」

私は手を払い、交易から帰って来た夫を迎えた。
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