傾国の姫君
役人は正英を見ると、何てことだろうか、家の中に蹴り飛ばしたのだ。

「何て事を!」

「これから秦王が通ると言うのに、死体を見せる気か!馬鹿者目が!」

そして役人は、列に戻って行った。

「待って下さい……」

慶文は涙を流しながら、家の中に横たわっている正英を抱きかかえて来た。


「慶文……」

「そもそも、どうして子供が前に飛び出したのに、馬を止めなかったのですか。」

役人達は、冷たい目で慶文を見る。

「あなた達のせいで、私の子供が死んだのですよ!どう償ってくれると言うのですか!」

「おまえ、秦王の前に死体を見せるなと言っただろうがあ!」

さっきの役人が、慶文を蹴った。

「この無礼者があ!」

何度も何度も蹴られて、慶文は口から血を流した。

「慶文!」

慶文に近づこうとすると、照葉さんに止められた。


「何があったのだ。」

秦王の言葉が響く。

「失礼しました。子供が馬の前に飛び出し、頭を割って死んだ様子。その父親が、無礼を働きまして。」

「殺せ。」
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