傾国の姫君
そんなある日の事だった。

野菜を売っている途中で、喉が渇いた。

持って来た水筒を取ろうと、後ろを向いた時だ。

水筒を蹴ってしまったみたいで、ころころ転がって行った。

「おっと。」

水筒は、家の軒下で止まった。

それを私が拾い上げようとした時だ。


「なに?秦王の暗殺計画?」

「ああ、その為には女が必要だ。誰かいないか?」

私は咄嗟に、軒下にしゃがみこんだ。

「どんな女だ?」

「秦王に強い恨みを持っている女。若いなら尚更いい。」

秦王に強い恨みを持っている若い女。

私の事じゃないか!

「そんな女、滅多にいないからな。で?見つけてどうするんだい。」

「秦王の妃にして、寝首をかく。」

胸がドキドキしてきた。

この手で、秦王を殺せるのか!
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