傾国の姫君
この階段の多さだもんね。

「毎日、水桶を持ってこの階段を昇っているからな。普通の追手では、追いつけない。」

「その後は?」

「どこにでも好きな場所に、行けばいいさ。」

「そうだね。」

私は、夫と子供を殺した秦王を撃つ。

それだけが、今の目標だ。

「剣術も舞も、上達している。後は、思い切って実行に移す事だ。」

「ああ。」


あんたが言う、覚悟ってヤツだね。

私は、その時覚悟した。

何が何でも、秦王に取り入って、命を奪ってやる!


その日の夜。

風呂に入った私は、香油を身体に塗った。

自慢じゃないけれど、この香油は家に伝わる物で、男を虜にする匂いがする。

しばらくして、風呂から戻って来た類が、私の側で横になった。

「ねえ、類。」

ちょっと色気染みた声で、呼んでみた。

「なんだ?」
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