傾国の姫君
「一人年増が入っているね。」

「どれどれ?」

どうやら、一人大人が入っているようで、周りの視線は私に集中している。

いいんだ。

どうせ町を抜けたら、誰にも見られないんだ。

その時だった。

「心我!心我じゃないか!」


名前をふと呼ばれ、振り返ると、そこには照葉さんがいた。

まずい。

顔を見られると、面倒な事になる。


「心我だろ!今までどこにいたんだよ。」

「人違いじゃ……」

「人違いなものか。心我!お妃候補って、どういうつもりだい!」

皆が聞いている。

どうしよう。怪しまれる。

「心我!」

一巻の終わりだと思った。

その時だ。

「きゃあああ!」

人の悲鳴が聞こえた。
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