傾国の姫君
見ると、照葉さんが血を流して倒れている。

「照……」

そしてハッとした。

近くに、類がいたからだ。

類が、やったんだ。

私の過去を消す為に!

私は、倒れた照葉さんをそのままにして、馬車に乗り続けた。


これでいいんだ。

過去がバレたら、秦王に近づけない。

慶文や正英の恨みも晴らせない。

ごめんね、照葉さん。

どうか、照葉さんの傷が浅く、助かりますように。

それだけを祈っていた。


馬車は、中央までの間に、野宿した。

お妃候補が呆れる。

宿もない中で、皆木の側に焚火をして、土の上に横になった。


「あんた、名前はなんて言うんだい?」

隣に寝ている子に、話しかけた。

「花香だよ。」
< 49 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop