傾国の姫君
「なんで、お妃候補になったんだい?」

「言っても、信じて貰えないよ。」

背中が、寂しさを語っていた。

「こうして一緒にお妃候補になった仲だ。聞こうじゃないか。」

「先に、お姉さんがお妃候補になった理由、教えて。」

言葉が詰まった。

復讐する為だなんて、誰にも言えないよね。

そして、誰かが言った言葉を思い出す。

「……金かな。」

「そんな不埒な理由なんだ。」

「そう言われてみれば、そうだね。」

「私は違う。」

花香の声が低くなった。

「私、前に秦王の行列を見たんだ。その中で秦王は、特別な人だった。私は一目惚れしたんだ。」

私は驚いた。

あの冷徹王に、一目惚れ?

「だから、他の人になんて負けない。必ず秦王に選ばれて、秦王の子供を産むんだ。」

純粋な気持ちなんだね。

でも、それも私には、馬鹿馬鹿しく思えた。

「……選ばれるといいね。」

「うん。」

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