傾国の姫君
「まあ!気を付けないと。」

照葉さんが言うと、周りからクスクス笑い声が聞こえた。

「笑うが、どんな女が連れて行かれるか分からない。そこで、夫のいる女は、当日参列せずに、家の中で息を潜めているんだ。」

「秦王には会えないのかい?」

「会っても、頭を下げていて秦王の顔は、拝見できない。」

周りはざわざわしだした。


「そんな大変な日になるんだ。」

「大体、そんな事までして、何が目的で来るの?」

中央の役人を探していると言うのは、皆知らないらしい。

「ねえ、慶文。例の話、来た?」

だが慶文は、黙ったままだ。

「慶文?」

「あっ、ああ……」

慶文は何が悩んでいるような気がして、それ以上話しかけなかった。


こうして、一週間後。

その冷徹と言われた秦王が、この村にやってくる。

村はその話題で、持ち切りだった。

< 6 / 55 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop