傾国の姫君
そして一週間が過ぎ、秦王がやってくる日が来た。

「いいか、皆!無礼がないように一列に並んで、じっと頭を下げているんだぞ。」

何度も村の長から、注意がされた。

「特に女は、顔を上げるなよ。絶対、秦王の顔は見るな!」

「はい。」


その時だった。

遥か遠くから、土煙を起こして、秦王の列がやってきた。

「来た!」

「さあ、私達は、家の中に隠れましょう。」

照葉さんに言われ、私は正英と共に、家の中に入った。

辺りはシーンと静まり帰り、馬の蹄の音がしてくる。

男達は、顔を下に下げ、決して動かずにいた。

皆ただ何もなく、秦王の列が通り過ぎるのを、待ちわびた。


いよいよ、私の家の前に来るかと思う頃。

私は、ドキドキしていた。

家の中からだったら、秦王を見ても、目は合わないと思ったからだ。

その瞬間だった。

秦王の列が、私の家の前で停まった。

「この辺りに、玉慶文という者はいるか。」
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