傾国の姫君
慌てて村の長が、慶文の前に来た。

「玉慶文は、この者であります。」

慶文は、一際大きく頭を下げた。

「そなたは、この辺りでも知識人であり、商才もあると言う。誠か。」

「畏れ多い事であります。しかしながら、自分ではそのような物は持ち合わせておるとは思えません。」

すると馬の上に乗っていた秦王が、慶文に向かって話しかけた。

「才のある者は、自分を下に見る。周りが才能があると言うのだから、そなたにはそれがあるのだろう。」

「誠に恐れ入ります。」

「追って、話をする。」

「はい。」


そして、列が動き出した。

私は、慶文が王の役人に、選ばれたのだと思った。

「ああ!遂にこの日が。」

嬉しくて、涙を拭いていた時だ。

「あら、正英?」

近くにいたはずの正英がいない。

「正英!正英!」

私は、家の庭に出た。

「正英!どこに行ったの!?」
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