音を失い得たものは。
新生活の始まり
涙の溢れる入学式
「学校、楽しみだな······」
学校が楽しみ。そう思えるのは昨日の出来事があってこそのことだ。
私、柊 雨音(ヒイラギ アマネ)は今年16歳を迎える高校1年生だ。
高校生······と言っても今日から授業がスタートするので、まだ中学生に近いものである。
昨日は入学式があって、私は新入生として参加した。
耳が聞こえない私は、在校生のあいさつも、当然校長先生の挨拶も聞こえなかった。
事前に学校側に耳が聞こえないことは伝えていたのだが、残念なことに対応出来なかったのだろう。
そんな状況の中始まったのは新入生の名前の読み上げ。
呼ばれる順番に座っているので、聞こえなくても何となくいけるだろうと思っていた私の目に映ったのは、スクリーンに映し出された名前だった。
新入生130人、全ての生徒の名前が順番にスクリーンに映し出され、名前の周りには
『入学おめでとう!!』や
『これからよろしくね!』など、
在校生からの言葉が書かれていた。
私の番が来ても、その画像のおかげでタイミング良く立ち上がることが出来た。