おどおど姫と甘い恋♡
話すチャンスは、あったのに。
あずさがいるんだから、会話ができそうな雰囲気だったのに。
でも、ダメだ……。
今は、無理だ……。
だって……
「この絵、大ちゃん先輩の案ってマジですか?」
「…、」
菊の弟が……彼氏が同じ教室内にいんのに、ななちゃんに近づく勇気、俺にはねぇ。
旗を覗いたあと、答えを求めるみたいに俺を見てくるその視線が、痛すぎる……。
「、そ、なの…、かも、」
「かもじゃなくて、その通りだろ」
ヤマが俺の代わりに答えたのに、菊の弟は、一瞬違うほうを見てた。
見てた先がわかるのは、きっと俺だけ。
「きくりん、聞いてる?」
「あ、はいっ」
「……。」
ななちゃんを見てたんだ、って……
きっと俺だけが、気づいてた。