おどおど姫と甘い恋♡



少し前を歩く俺に、着いてくる足音。


心臓は、なんでか妙に落ち着いてきた。


いきなり、……初めての2人だけの、手伝いなのに。


ドキドキってより、ワクワクのほうが、断然大きい。


だって多分、これで通行人から昇格できたから。


俺っていう存在を、しっかり把握してもらえたはずだから。



「……だいじょー、ぶ?」



階段途中で止まって振り向いたら、ななちゃんが少し後ろから焦るように追いかけてきた。



「……、だいじょぶ、デス、」



やべぇって、思った。


早く来いって、焦らせちゃったかもって、……へこむ。


全然、周りの景色も見えてないくらい、俺なりに一生懸命なのに。


一生懸命やっても、結局こんな風に最後はへこむ。



「、…」

「……。」



へんこんで全然喋れなくなって、……シーンとして。


こんなん、2人で仕事してんのに、1人でやってるみたいじゃんって。


気が利く言葉の1つも言えない俺は……全然、ダメダメ。




3階まで上ると、廊下を少し歩いた先に職員室がある。


ななちゃんとの仕事は、もうすぐ終わり。


せっかく隣歩いてんのに、なんにもできないまま、終わる。


や、なにかをするつもりは元々ないし、雄介とかヤマみたいに、適当にベラベラ喋れる性格でもないから、こうなるのはわかりきってたけど。


つまんねぇだろなって、思った。


俺といても、俺と手伝いしてても、なんも面白くねぇだろなって。


早く終わらせたいはずって考えたら、急に申し訳なくなってくる。


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