おどおど姫と甘い恋♡
揉めてる2人がうるさくて、集中力は戻りそうもない。
「ん。休憩。飲みもん買ってくる。」
持ってた鉛筆を放り投げ、集中したせいで固まった肩と首を手で揉みながら立ち上がる。
歩くその先に、ななちゃんがいるのは当然知ってる。
俺、全部ちゃんとわかってる。
目の前をこんな風に通ったところで、なにも起きないってのは、ちゃんとわかって、
「、…」
「……。」
わかってる、はずなのに……なぜか、目が、合った。
ほんのちょっとだけ、だけど……こっち、見てた。
いや、だからって別に、……
多分、さっき一緒に本を運んだ人、くらいの認識。
目が合う理由なんて、それだけしかない。
大丈夫、……俺、自惚れたりしないから。
舞い上がりそうな気持ちを抑えて、自惚れないよう言い聞かせながら教室を出た。
廊下から見える窓の外は、さっきより激しい雨が降ってる。
でもそんな灰色の空は、なんとなく、まだかろうじて太陽の光が見えそうで、雲の隙間から少しの光が見えてる。
頑張れば雨は止んで、オレンジとか赤とか薄いピンクとか、そんな色の夕焼けに変わりそうな空模様。
頑張って夕焼けになろうとしてる空を見ながら、考えた。
俺、頑張ってんのかな、って。
だとしたら、なんのためなのかな、って。
菊の弟を傷つけるのに……俺、自分のためだけに頑張っていいのかな、って。