おどおど姫と甘い恋♡
「……ごめん、」
「え?」
「飲めねぇ、や、」
「……」
コーヒー牛乳は、あずさが言った通り、『恋の味』だから。
他の誰かの『甘い』は、全然、違う。
コーヒー牛乳を、愛原さんの手に、戻した。
「大ちゃん先輩……?」
気づいた。
今、気づいた。
頑張るってのは、愛原さんみたいな人のこと。
この間まで知らなかった存在を、名前を、気持ちを……愛原さんが頑張ってるからこそ、今の俺は知っている。
知っているからこそ、コーヒー牛乳を受け取らないって選択が、できる。
だから、
「俺、好きな子いる。」
俺はまだ、なんにも、全然頑張ってない。
どっかで遠慮して、怖気づいて、それでも『恋の味』には浸ってて。
全部が中途半端で、全部が宙ぶらりんで。
でも、そんな自分はもう嫌だ。
存在を、名前を、気持ちを……俺もあの子に、知ってもらいたい。
『ごめん』って言われたとしても、
知ってもらいたい。
「ごめん、愛原さん、」
愛原さんの横を通って、廊下を抜ける。
決めた。
ちゃんと頑張るって。
やっぱりさっちゃんが言ったように、『恋は仕勝ち』だと思うから。
遠慮して負けるくらいなら、遠慮しないで負けたほうが、ずっといい。