おどおど姫と甘い恋♡
もし、体育祭優勝できなかったら、俺のせいかもって、思う。
ミサンガに違うこと願ってる、俺のせいかもって、思う。
でも、……俺、がんばって旗描くから。
旗で1位取って、優勝に貢献すっから。
それできっと、ミサンガに違うことお願いする件は、チャラになるはず。
「……雨、やんだ。」
「……ぁ…」
全然止みそうになかったのに、気づいたら雨はすっかり止んでいた。
窓の向こうに見える雨上がりの景色が光ってて、なんかすげぇ、キレイ。
こんな風にキレイに見えんのも、恋のせいなんかなって、……17歳にして、初めての感動。
「大ちゃーん、絵がうまく描けないって1年泣いてるー。描いてやってー」
LINEしかしてねぇ雄介が、偉そうに俺を呼ぶ。
「……ん。」
一気に現実に引き戻されて、雨上がりの景色が、教室の中に戻ってく。
「……んじゃ、がんばって、ね。」
「……ハイ、」
パタンと閉じた本を机に置いて、旗係のほうに歩き出す。
現実の世界は、旗係。
今までの世界は、俺にとってはちょっと非現実。
無理矢理隣に座って、無理矢理作り上げたみたいな、そんな時間。
でも……手首には、青いミサンガがついてる。
非現実っぽかったあの時間も、このミサンガが、現実だって教えてくれる。
多分今日で……もう、ただの通行人から抜け出せた。
見ず知らずの人間から、昇格できた、……はず。