おどおど姫と甘い恋♡
「うわ、なにこれすごい!」
頭の上から、声が聞こえた。
なんとなく振り向いて見上げた、その先で……
「……。」
「、…」
いつの間にか後ろにいたななちゃんと、思いっきり、目が合った……
完全に目を逸らすタイミングを逃して、そのまま、目が離せない。
「男ってさー、なんでこんなバカなんだろー。ちょっとLINE返ってきたぐらいで両思いとか、どんだけ脳みそ幸せなのよ」
「幸せは頭からって言うだろ」
「言わねーよ。誰の名言だよ」
あずさと雄介の会話がバカすぎて、ななちゃんと目が合ったまま、また笑う。
俺たぶん、今変な人って思われてる。
さっきまでななちゃんの隣に座って話してたんだから、今も普通に話しかければいいのに。
いきなりすぎて言葉が出なくて、なのに謎に笑う俺……。
絶対、変な人……
「ね、これすごいね」
「あ、うん」
ななちゃんの視線が、旗へ向かった。
まだ完成してない中途半端な絵は、あんま見ないでほしいのに。
見るんなら、完成したときがいいのに。
「……すご、い」
「…、」
「あ、…」
聞こえた声に、下げていた顔をもっかい上げた。
「、…」
ななちゃんが照れたみたいに口元を押えてるから、今の『すごい』は本音なのかもって、嬉しくなる。
そのあとはちゃんと目が合って、笑い合えたからよしとしよう。
雄介みたいに両思いかも、なんて、こんなことぐらいでは思えない俺だけど。
『幸せは頭から』……らしいし。
がんばった今日の俺へのご褒美に、頭に幸せを浮かべるのもいいかもしれない。