おどおど姫と甘い恋♡
「なに言ってんの。なんで私が泣かなきゃなんねんだよ」
あずさが泣くとか、全然、想像なんてできないけど。
今のあずさの言葉は、ただの強がりなのかなって。
バカな俺にも、アホな雄介にも、なんとなくはわかる。
「泣くだろ普通」
「なんで」
「フラれたら泣くだろ、普通」
「私の普通を勝手に決めないでくれる」
俺たちは、瞬くんみたいな感情であずさのことを想えない。
けど……瞬くんじゃない俺たちは、俺たちなりの役割があるはずで。
どんな役割だって聞かれたら。
それは……
「お前の普通くらい知ってる。友達だろ、俺ら」
雄介が、力強く言いきった。
友達。
俺たちは、みんな友達。
「もしものときは、雄介が胸貸してくれるってこと言いたいんじゃない?」
「その通りだ菊!よく言った!」
「あ、俺は彼女に怒られるから胸は貸せねぇけど、ハンカチぐらいなら貸してやるよ?」
「いらんし」
いつの間にか出来あがった輪の中で、イスにドカッと座ったあずさが顔を背けて――
「でもまぁ……そんときはよろしく」
まじでこいつらいい奴らだなって、勝手に口が緩んでく。
……ああ、そっか。
こいつらとの高校生活も、あと数ヶ月。
1年後はもう、俺たちここにいないんだ――…