おどおど姫と甘い恋♡



「あ。……ざつよー、かかり。」



顔をあげて、やっと話しかけたとき。


目に映ったのは、あの子の手首。


ミサンガ、外されてないって。


嫌だったらすぐ外されるんじゃねぇかって、不安だったけど。


手首に青いミサンガが、まだちゃんと着いてんだもん。


嫌じゃなかったって、自惚れていーんかな。



「どっちかさ、本の印ついてるとこ、全部コピーしてきてくれない?」



そんなことを考えてる隙に、桑野に会話を持っていかれた。



「今日みんな用事あるらしくて、旗係出席率悪くてさ」

「あ、じゃあ私行ってくるよ」

「おー、ありがとう伊集院」


俺があの子に頼もうとしてたことを、桑野がサラッと頼んでる。


せっかくの話しかけるチャンスが台無しで、俺、なんも会話できねぇし。


話すこと、なくなったし……。


「この本?」

「そう、それ全部。必要なとこポストイット貼ってるから」

「りょうかーい」

「雑用ー、ちょっとどっちか衣装手伝いに来てー!見に行ったらあいつら全然進んでなくて悲惨!手伝ってやんないと間に合わない!」



どんだけ声でけぇんだって、あずさの声が教室に響く。


突然現れてその声量って、心臓に悪ぃ。


「あ、じゃあ私が、」

「私、行きます!」



すっげぇ、いい子。


ななちゃんの友達、すっげぇ、いい子!



危うくあずさごときに、ななちゃん連れてかれるとこだったじゃん。



友達があずさに連れてかれて、そっからは妙な緊張感。


感じてんのは、俺だけかもしんねぇけど……。



なんでこんなドキドキするんかなぁって、もう完全に恋の病ってやつ。


< 164 / 166 >

この作品をシェア

pagetop