おどおど姫と甘い恋♡
「あ。……ざつよー、かかり。」
顔をあげて、やっと話しかけたとき。
目に映ったのは、あの子の手首。
ミサンガ、外されてないって。
嫌だったらすぐ外されるんじゃねぇかって、不安だったけど。
手首に青いミサンガが、まだちゃんと着いてんだもん。
嫌じゃなかったって、自惚れていーんかな。
「どっちかさ、本の印ついてるとこ、全部コピーしてきてくれない?」
そんなことを考えてる隙に、桑野に会話を持っていかれた。
「今日みんな用事あるらしくて、旗係出席率悪くてさ」
「あ、じゃあ私行ってくるよ」
「おー、ありがとう伊集院」
俺があの子に頼もうとしてたことを、桑野がサラッと頼んでる。
せっかくの話しかけるチャンスが台無しで、俺、なんも会話できねぇし。
話すこと、なくなったし……。
「この本?」
「そう、それ全部。必要なとこポストイット貼ってるから」
「りょうかーい」
「雑用ー、ちょっとどっちか衣装手伝いに来てー!見に行ったらあいつら全然進んでなくて悲惨!手伝ってやんないと間に合わない!」
どんだけ声でけぇんだって、あずさの声が教室に響く。
突然現れてその声量って、心臓に悪ぃ。
「あ、じゃあ私が、」
「私、行きます!」
すっげぇ、いい子。
ななちゃんの友達、すっげぇ、いい子!
危うくあずさごときに、ななちゃん連れてかれるとこだったじゃん。
友達があずさに連れてかれて、そっからは妙な緊張感。
感じてんのは、俺だけかもしんねぇけど……。
なんでこんなドキドキするんかなぁって、もう完全に恋の病ってやつ。