おどおど姫と甘い恋♡
4月に個人面談が終わって、俺らももう本格的に高3なんだなって、なんとなく実感してる。
みんながどんな進路に進むのか、詳しく聞いたことはないけど、菊あたりは指定校推薦とか狙ってそう。
「先週のジャンプさー、ワンピースがすんげぇいいとこで終わってさー」
「冬に桜咲いたとこ?」
「古ぃわ!」
3人で、1階へと下りた。
進む廊下は、妙に静か。
窓の外は……さっきまで降ってなかったのに、雨が降ってる。
「つーか雨降ってるじゃん、大ちゃん傘持ってる?」
「んー……持ってない。」
「菊持ってんだろ」
「んじゃみんなで菊の傘入るかー」
「……。」
つーか……今、……
あれ、……今、
立ち止まって、
振り向いた先に見えたのは……
「…、」
やっぱり、あの子……
俯きがちに立ち止まってて、全然、こっち見ねぇけど……
2週間ぶりのあの子が……トイレの前の廊下に、ぽつんと立ってる。
やば、……
「大ちゃーん、どしたー?」
「……。」
「おーおーはーらー」
「んー……。」
なにも……言えるわけないから、
足を、進めるしかない。
一言でも話せたらって、思うのに。
交わす言葉1つも思いつかない、ダメな俺……