おどおど姫と甘い恋♡



次の角を曲がったら、あとは玄関への真っ直ぐな廊下が続くだけ。



「うわ、雨さっきより強いじゃん」

「……。」



さっきみたいに見てるだけでいいのか、自問自答を繰り返しながら廊下を進む。



多分、違う。


見てるだけでいいのと、違う。



黙って見てるだけじゃなんにも始まらないって、あずさも言ってた。


じゃあ、なにをすれば……どうすれば、始まりになんの、……?




「、、、…」



もし……今戻って、まだ、あの子がいたら……


俺、がんばれる?


もし、まだいたら……声、掛けれる?




「お、れ……。」



玄関に向かうみんなの足が、止まった。



「ん、どした?」

「あ、傘あること思いだしたとか?」

「…、」



視線はもう玄関から逆向きになって、さっき通った廊下の方へ集中してる。


まだいたら、声をかけようって……自分に誓う。



「行って、くる、」

「え、傘?なら俺も一緒に行くわ」

「じゃー俺も」

「……。」



別に、いいけど……。


いたらいたで、こいつらピンチになったら適当に喋ってくれそうだし。


< 32 / 166 >

この作品をシェア

pagetop