おどおど姫と甘い恋♡
「……ぁ。」
駐輪場で自転車に鍵を掛け終わって、体を持ち上げたとき。
すぐに視界に、飛び込んできた。
正門から歩いて来る、あの子の姿。
多分、歩いてきた方向からして、徒歩通学。
今、右の道路から曲がってきたよね?
右方面は、駅もバス亭もないから……徒歩通ってこと、だよね?
駐輪場から、じーっと目で追う。
あの子が学校に入るまで、そのまま立ち止まって、じーーっと……
つーか朝から会えるとか、ラッキーくねぇ?
俺、絶対今日の運勢1位じゃん。
「あ、おはようございます」
瞬くんが……急にかしこまる。
誰にそんなにかしこまってんのかと思って、見たら。
「あら、2人共おはよう」
「なんだ、さっちゃんか」
俺にとっては友達のさっちゃんだけど、瞬くんにとっては彼女の母ちゃん。
接し方は、俺と瞬くんでは全然違う。
「ほらほら、早く行かないと遅刻するわよ」
「まだしねーし。」
学食のおばちゃんやおじちゃんたちは、みんな違う入口から入るのに、なんでかさっちゃんだけは生徒用の玄関から忍び込む。
こっちの玄関のほうが家から近いんだからいーじゃない!って、いい大人が決められたルールを完全無視。