おどおど姫と甘い恋♡
「じゃあ私、行きますね」
「うん、ばいばーい!」
「……。」
まるで直人が愛原さんと話してたみたいな返事で、見送った。
「彼女?」
「ちげーし。」
「ふーん」
聞いといて大して興味もなさそうな直人だったけど……
「あ……」
「ん、?」
急に大人しくなったから、なにかと思って視線を向けたら。
直人は廊下の向こうを、じっと見てた。
何人かいる生徒の中で、誰を見てるかは分かんないけど……じーっと、誰かを見てる。
「直人?」
「……」
なに、どうした。
「大ちゃん、イツカちゃんって覚えてる?」
「……え?」
直人の視線の先にいるであろうイツカちゃんが、どの子なのかわかんねぇから……目を凝らしてよく見てみる。
見覚えのある顔が、2人いた。
廊下のずーっと奥を歩いて行った、見覚えのある顔。
あれは確か、……高橋ななちゃんの周りにいる、友達集団の中の2人。
だけど直人が言った「イツカちゃん」が、その子なのか、どの子なのか……俺にはわかんない。