おどおど姫と甘い恋♡
「大ちゃーん、はい鉛筆ー」
「ん。」
鉛筆を受け取って、やっとパネルに向き合う。
あの子がここに来るかもなんて、無駄に期待すんのはやめておこう。
だって期待する分、なんもなかったときのへこみっぷりはきっと激しい。
最初から期待なんてしなかったら、きっとへこまなくて済む。
高橋ななちゃんはここには来ない。
うん、期待すんのはやめよう。
とにかく今は絵を描こうって、パネル係に頼まれた下描きを、鉛筆で大きく描いていく。
スラスラ鉛筆を動かして、目の前のパネルにだけ集中。
絵を描くのは好きだから、いつの間にか真剣になって、3年の男子の声も、あの子の友達集団の声も、周りの音が、全部聞こえなくなる。
無心になって、他の全てをシャットアウト。
時間を忘れて、無我夢中で描き続ける。
けど。
気に入らない線が生まれたとき、意識は急に引き戻される。