おどおど姫と甘い恋♡



全然、身に覚えはないから、……なんか、架空の話しをされてるみたいで、よくわかんないけど。


じゃあ、直人が言ってたみたいに、俺が1番最初に泣かす子は愛原さんじゃないって、こと、……?



そんなことを考えながら、歩いた廊下。


あずさの横で、一瞬立ち止まりそうになったのは……教室の前に、見えたから。


あの子と、……菊の弟が。



「わわわっ、なになにー高橋~、副リーダーと付き合ってんのー!?」

「…、、、」



心臓が、……すごい音を、体中に響かせた。


今まで感じた、どの音とも違う。


人生で初めて感じる、痛い音。


その音のせいで、周りの声が聞こえなくなる。



「あずりん先輩、ちがっ、!」

「おっと、俺もう行かなきゃ怒られる。つーわけでなんかあったらいつでも言えよ、俺はお前の味方だ!」

「きゃっ、副リーダー頼もしい!」




「…、」




俺はいつか、愛原さんを泣かすんだって、思ってた。


だけど気付いた。


違うのかもって。


泣くのは、愛原さんだけじゃなくて、……俺だって、同じなんだって。


名前を知ったって、クラスを知ったって、同じチームになれたって……


例えばもっと近づいて、もっともっと仲良くなれたとしても……


この想いが、報われるわけじゃない。


届かない想いがあるってことに、……それが自分の想いかもしれないってことに、




やっと、気付いた……



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