若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
それでも諦めず、追い縋るように蓮さんを追いかけていく子たちや、「もう!」と不満げにどこかへ行ってしまう子たちの中で、私はすぐにその場から動けなかった。
どうしようと、ボールペンが入った箱を見つめていると、近づいてくる足音に気がついた。
何気なく顔を向け、思わず息をのむ。
そして同じように、こちらに向かってやって来ていた渡瀬先輩も私に反応を示した。
「……蓮君、見かけた?」
そのまま通り過ぎて行ってくれるのを願ったが、渡瀬先輩はすぐそばで立ち止まり、ぽつりと話しかけてきた。
「は、はい。向こうに行きました」
蓮さんが立ち去った方向へとわずかに震えながら指差すと、渡瀬先輩が物言いたげな顔をしたため、私は無意識に身構える。
「それ、蓮君に受け取ってもらえなかったんでしょ?」
見透かされたことに、心の中で苦さが広がる。
なにも答えない代わりに、プレゼントの箱を持つ手に力がこもる。
「当然よね。祖父同士の仲がいいから富谷さんには気を使っていただけで、実際、蓮君が一番大切に思っているのはこの私だもの」