若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
「そうだろうとは思っていましたけど、蓮さん、モテますね」
「なんの話だ?」
「ただの予想ですから気にしないでください」
気になって仕方がない様子の蓮さんを笑って交わしながら、何気なく加々澤さん達のいる方へと視線を向けて、息をのむ。
さっきまで人当たりの良い笑みを浮かべて手を振ってくれていた娘さんが、今は不満たっぷりの顔でこちらを見ている。
別人にでもなってしまったかのような変わりように、私の予想は当たっていると確信に近いものを得た。
その後はヤツシロの展示ブースに向かい、メディアやバイヤーの対応をした後、挨拶回りに勤しんだ。
普段、蓮さんの働いている姿を目にすることがないためとても新鮮で、スマートに受け答えする姿は余裕すら感じられ、惚れ直してしまうほど文句なしに素敵だ。
何人もの挨拶を終えた後、つい大きく息を吐いた私の頬に蓮さんの指が触れた。
「疲れただろ。受付の近くに休憩所があったな。少し休むか」
飲み物の自動販売機や、ベンチがいくつも並んでいたのを、私も目にしている。
蓮さんの気遣いを受けて、気を張り続けたための精神的疲労を実感し、その言葉に甘えるべく頷く。