若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
スマホを見たりして気を紛らわせようとしてもなかなか上手くいかず、私はゆっくりと身を起こし、部屋を出た。
冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを飲んでから、テレビの前へ。
何か面白い番組はやっていないだろうかとテレビをつけて、私は動きを止める。
ちょうど放送されていたのが、都内のホテルや旅館を紹介する番組で、湾岸エリアにある有名ホテルの客室が映し出されていた。
ぼんやりと無表情で見つめていると、オススメとしていくつか別のホテルがあげられ、その中に富谷旅館も入っていたことに、じわりと目頭が熱くなる。
最初に映った湾岸エリアのホテルだったり、ワタラセフードシステムや加々座屋と比べたら見劣りするかもしれないけれど、富谷旅館だって客室は和室洋室合わせて五十はあるし、決して規模が小さい訳ではない。
旅館の落ち着いた雰囲気を好んでくれて昔は文豪と呼ばれる人が、今だって多くのお客が繰り返し泊まりに来てくれている。
蓮さんが仕方なく私と婚約したと言われてすごく悲しかったけど、それだけじゃなかった。
富谷旅館を見下されたこともとても悔しかったんだとやっと気づき、目に涙を浮かべながら苦笑いした。