若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
「風呂に入るなら声をかけてくれたら良かったのに」
突然、後ろから話しかけられ、私は勢いよく振り返るも、涙で視界が滲んでいるため、すぐに彼から視線を逸らす。
「本当にどうしたんだ?」
背中から抱きしめられ、蓮さんの温もりが私を優しく包み込んでいく。
気持ちが穏やかになっていくのを感じながら素直に自分の気持ちを口にする。
「……蓮さんの婚約者は、私では力不足だなって」
「どうしてそんなことを」
「私、結構地味だから、どうしてこんな子がって思われたんじゃないかな。渡瀬先輩や、さっきの加々座屋の娘さんとかなら見た目に華があって、家業も大きくて……」
徐々に虚しくなってきて、途中で言うのをやめる。
「こんな泣き言しか言えない自分が情けない。ごめんなさい。もう寝ますね」
蓮さんの腕の中から抜け出しテレビを消して、「おやすみなさい」とひと言残して自室へ向かったが、部屋に入る前に蓮さんに引き寄せられ、あっという間に横抱きにされる。
「どこで寝るつもりだ」
「どこって、自分の布団で」
「俺のベッドで一緒にだろう」
蓮さんの部屋に入り、言葉通りベッドに降ろされる。