若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
「ありがとうございます」と女将さんに微笑み返した。
偽りから本物の婚約者になり、毎日蓮さんに甘やかされている。
自信をもって蓮さんの婚約者だと胸を張るのはまだ難しいけれど、みんなを騙していた罪悪感からは解放されたため、内心ホッとし息をつく。
時計と店の入り口へと交互に目を向けた私に、女将さんがふふっと笑いかける。
「今日は買い物をしにきたって感じじゃないわね。蓮と待ち合わせかしら?」
「……は、はい。今夜は外食することになっていて」
「あらそうなの。仲がいいわね」
女将さんに言われてはにかむも、その隣りにいる渡瀬先輩の刺々しい視線に居た堪れなくなる。
「……そうだわ。蓮に聞いたけれど、ここで働く方向で話をしてくれているのよね」
「はい。先日、蓮さんと色々相談して。改めて、女将さんに相談できたらと思っているので、近いうちに時間を作っていただけたらありがたいです」
「私もね、そう思っていたのよ。蓮の副社長就任の日も決まったし、これを機に、私も里咲ちゃんに自分の仕事を教えていきたいわ」
偽りの関係を終わりにすれば、結婚を意識せずにはいられない。