若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~

蓮さんの妻になった時に少しでも自信を持てるように、まずは和菓子のことを学びたいと考えたのだ。

蓮さんは三ヶ月後に副社長に就任することで調整を進めている状態だ。

できたらその前に、女将さんの元に入りたい。


「蓮君、もうすぐ副社長になってしまうんですね」


ぽつりと発せられた渡瀬先輩の呟きが、何ひとつおめでたくないといったように聞こえて困惑する。

しかしすぐに彼女はパッと表情を明るくさせて、「何かお祝いしなくちゃ」と楽しそうに言うと、いくつか和菓子を購入し、店を後にした。

それから、これから発売される新作和菓子の話や、先程の続きで、ヤツシロで働きたいと実家の親には言ってあることなどを女将さんと話しているうちに蓮さんが店に現れた。

そのまま私たちは予定通り、夕食を食べるために溝田先輩おすすめのお店へ。

車を二十分ほど走らせた後、パーキングに車を止めて、裏路地へ。

目的地は入り組んだ小道の先にある隠れ家的なレストラン。

食事も美味しいし、何気ない会話も弾む。

彼と過ごす一瞬一瞬が楽しいのに、ふとした瞬間、渡瀬先輩の不満そうな顔が脳裏に蘇り、心に不安が広がる。


「里咲?」


< 91 / 132 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop