若旦那様の溺愛は、焦れったくて、時々激しい~お見合いから始まる独占契約~
「仕事で複数人での食事だったり、プライベートでも航にくっついて来る可能性があるから顔を合わせることはあるかもしれないけど、渡瀬とふたりっきりで会うことはないから、変な心配はしなくていい」
「蓮さん、ありがとう」
真摯に告げられた言葉に自然と笑みが浮かぶ。
渡瀬先輩は部の怖い先輩としての印象がいまだに強く残り過ぎているからか、萎縮し過ぎてしまうところがあると自分でも感じている。
あの頃とは違い、私は蓮さんの婚約者なのだ。
何度もベッドを共にしているし、「好きだ」と言われてもいる。
大切にしてもらっているのだから、もっと自信を持って、余計なことを気にし過ぎないようにしよう。
それが一番だと自分を納得させ、気持ちを切り替える。
先ほど女将さんとも交わしたヤツシロ本店での若女将修行に向けての話へと話題を変えた。
蓮さんとの楽しい食事から一週間が経ち、朝の支度を済ませて、仕事に向かうべく今日も彼の車に乗り込む。
車が走り出したところで私は「あっ」と今夜の予定を思い出した。
「蓮さん、私今夜は富谷旅館のみんなとご飯食べてきますね」