塩彼氏の愛
集中してからの仕事は効率よく進み
思った以上に早く終わった。
パッと時計を見ると
ハナとやりとりしてから90分ほどたっていた。今日は金曜日。ここの所、休日出勤が多く、明日明後日は久しぶりの2連休だ。
一緒に残業していたメンバーから飲みに誘われたけど疲れてるのに会社の外でまで気を使いたくない。

「暫く忙しくて会えてない彼女が待ってるので」という当たり障りのない常套句で逃げ帰る。コレが1番イイ。和やかに声をかけてきた女の顔があからさまに曇る。女除けにも丁度良い。

しつこくされる前に急いで身支度をして自宅までの道を歩いている。

アレ?
仕事をしてた時には気がつかなかったけど
そう言えば、アイツなんて言ってたっけ?
携帯を取り出してLINEを見てみたけど
何も連絡はなし。いつもはあんな事細かにLINEしてくるってのに…

いつものあのミヤっていう子と飲んでるんだよな?アレ?!あいつなんて言ってたっけ?!
思い出せねぇな…

はぁ、電話してみるか

トゥルルルル〜

着信はするけど出ない…

留守電のアナウンスが流れたので切って
携帯を見つめていたら

ティロリロリロリィン〜

携帯が鳴った。ハナからだ。
俺はフっとため息を1つ吐いて電話に出る

「…あっ、もしもし?ユンちゃん??
ごめんね。騒がしくて音に気がつかなくて
出た瞬間に切れちゃった。仕事終わったの?」

電話の向こうは飲み屋だからか随分と騒がしい。

「ああ、うん、まぁな。
それよりも騒がしいなそっちは、耳が痛い」

「ごめんね。会社飲みでね…賑やかな感じ…
外に移動しようか?」
ハナが電話口で申し訳なさそうに言う。

「いや、いい。たまにはそういう付き合いも必要だよな。それに飲み屋ってどこも騒がしいしな。いつものミヤって子と一緒なんだろ?楽しんでこいよ」

「ぅん?ミヤ?ああミヤもいるよ!あのね、ユンちゃん、今日はね会社の飲み会なの。うちの課と営業課の歓送迎会、交流会だよ。さっき言おうとしたんだけど…」

「はぁっ💢?!!営業課との交流会?!
じゃー、このガヤガヤした煩い男の声ってなんなんだ?!」

ふざけんなバカが!
昨年の歓送迎会は行かせなかったのに…

一気に頭に血が上る俺。

「会社の人達だよ。言おうとしたんだけど…」

「…聞いてない。
男がいるなんて俺は聞いてない。」

ムカつく💢!!!

その時電話の向こうから
ハナを大声で呼ぶ男の声が

…ハナちゃ〜ん?どこ行くの?!
こっち来て!隣に来てよ〜‼︎

…あっ、ちょっと電話してるのですみません。
終わったら行きますので…
電話の向こうで申し訳なさそうにその男に応えるハナ

「おいっ‼︎お前なにやってんのっ?!
俺と言うものがありながら
他の男に声かけられてホイホイ行くわけ?
バカじゃねぇのっ!?💢」

「いやいやいや、ユンちゃん。
これは会社の飲み会だから。営業課の人だから!それに名前呼びする人なんて今の人だけだから!彼は誰にでもあんな感じだよ?わけわかんない!会社の人に男とか何言ってんの?
あるわけないでしょ?」
イラっとしたのかハナも少し声を荒げる。

「いやいやいやじゃねーよ!💢男じゃんか!しかも名前で呼ばせやがってっ!何考えてんの?会社の奴とかの域こえてんだろーが💢
完全にお前の事そういう目で見てる奴だろ!!営業課なんて男だらけじゃん、俺聞いてねぇぞ。大体からお前、彼氏いるって会社で言ってんのか?!」

溢れ出す感情が抑え切れない
他の男に名前で呼ばれるなんて
許せねぇ!

「…言ってない。会社でわざわざ彼氏いるとか言う??!それにそっちが先に電話切ったんでしょ?!ユンちゃんこそ何言ってんの?」

ハナの機嫌が更に悪くなったのか
声がワントーン下がった。ヤバい…
これ以上怒らせて、その男とどうにかなったらたまったもんじゃない。

もうこうなったら俺の負け。
悔しいけど惚れたもん負け…

「……わかった。今どこにいるの?
どこの飲み屋?」

「S駅の〇〇っていう飲み屋だけど…何で?」

「迎えに行くから待ってろ!そいつの隣には絶対行くなよ?!触らせるな!名前も呼ばせるな!!いいな?!!!」

「えっ?!いいよ来なくて、ずっと休みなしで疲れてるでしょ!帰って休みなよ。」

「うるせぇ、バカが、黙って待ってろよ。
わかったな?」

「えっ… ああもう!わかったよ」
ハナのその言葉を最後に俺は携帯を速攻閉じて
足早にタクシーに乗り込んだ

悠之介サイド終わり
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