塩彼氏の愛
「ホラホラホラ、須崎さん戻ってください〜」
ミヤが須崎さんの背中を押して中に入るように諭すと、須崎さんが振り返って私を見て

「あの、ハナちゃん…」

と、何か言いかけたので
須崎さんの方に視線をずらそうとしたら

間髪入れずに私の頬を両手で挟み
自分の方に向けさせるユンちゃん。

「おい、ハナ、こいつの声…
さっきの電話の奴だよな?!
触らせるな、名前呼びさせるな、お前は俺のもんだと言えって言わなかったっけ?」

「そんな暇無かったよ。急に来るって言うから
部長さんに挨拶して、身支度整えて、すぐに出てきたから…」

疑いの眼差しで見てくるユンちゃん。

「ホントですよ、彼氏さん」
と、ミヤも口添えしてくれた。

すると、イライラを通り越して
完全に怒ってる時の地鳴りのような
低い声で

「…そっか、そういうことだから…
俺の女に手を出したら許さない」
と、言うと須崎さんを凄い迫力で睨みつける。

須崎さんは何も言わずに私を見ると、無言で下を向いて中に戻って行った。その後ろに続いてミヤもニコニコしながら手を振って戻って行った。

少しの間2人の中に沈黙が起き
ユンちゃんの顔はイライラモード。
私も段々とイラついてきた。

なにやってんの?!
今まで会社で人間関係上手くやってきてたのに‼︎
自然と文句が口から出てくる。

「ユンちゃん、何言ってんの?
いきなり迎えにきて、会社の人に失礼な事言ってさ‼︎」

「…はぁ?!失礼な事はないだろ?
いくら会社関係でも男と女だ。片方にそういう感情が起きてる時点で人間関係なんて意味ないし、関係ないね、まぁ、とりあえず帰ろうぜタクシー待たせてる」
と、急かすユンちゃん。

「いや、今の時間タクシーで家まで帰ったら
高いよ?!!私は電車で帰るよ。勿体ないよ…」

「1人で帰すわけないだろ。危ないし…
俺んちにくるだろ?
ここから近いの知ってるだろ?」
先程とは違って、久々の優しいユンちゃん降臨。

はぁ、このユンちゃんには
なんでも許しちゃう!
ホント罪な男め。

「今からユンちゃん家に行ったら
なんだかんだで終電逃すから、このまま電車で帰るよ。迎えに来てくれたのに怒ってごめんね。少しでも会えて嬉しかったよ。
1ヶ月以上顔見て無かったからね」
と、笑顔を見せ、ユンちゃんの腕から距離を取ろうとすると、フッと一瞬だけ笑顔になるユンちゃん。ほんの一瞬だけど彼の笑顔は糖度100%!見慣れてない人は瞬時にノックアウトされる破壊力なのである。

今度は包み込むように抱き締められた。

「ダメ、帰さない。明日休みじゃん。
泊まればいい、ハナはうちに来ても絶対泊まらないよね?4年も付き合ってるのに…」
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