夜風のような君に恋をした
プロローグ
いつも以上に闇の濃い夜だった。

俺は今日も、高架から夜の国道を見下ろしていた。

車のヘッドライトの薄黄色と、テールランプの赤色が、アスファルトの地面で踊るように揺れている。

中空には、ビルの窓明かりと、信号機の赤や青。

闇の中、色とりどりに輝くそれらの光は、まるで星屑みたいで、吸い込まれそうなほどきれいだった。

秋の匂いの混ざった夜風が、残酷なまでに優しく頬を撫でる。

前々から思っていた。

俺は、この世界に馴染めていない。

どこにいても何をしていても、俺ひとりだけが切り取られたみたいに浮いている。

きっと、何かの間違いでこんなところにいるんだろう。

この場所だけが俺の居場所だと思っていたけど、それもどうやら違った。

疲れたんじゃない、間違いを正したいだけだ。

要するにこれは、消極的な衝動ではなく、あくまでも前向きな衝動なんだ。



俺は今日、この夜に消える。

 
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