夜風のような君に恋をした
私のお兄ちゃんは引きこもりで、家の中はいつも暗い。

学校ではいい人を演じ続けて、疲れ切っている。

どこにも居場所のないこんな世界、大嫌いだった。

そして私は死にたがりになって、同じく死にたがりの冬夜と出会った。

はじめは失礼な人だと思ったけど、共通点の多い彼と一緒にいるうちに、居心地のよさを覚えるようになる。

やがて、死にたがりの彼が心の内に秘めた優しさを知って――。

私の淀んだ毎日は、少しずつ柔らかな光を纏うようになった。

塾のある日が待ち遠しい。

帰りに、冬夜に会えるから。

彼の口から“今日あったいい出来事”が聞けるから。

冬夜は今日どんな話をして、どんな風に笑うのだろう。

いつしか、死にたがりだということを忘れ、もっと彼のことが知りたいと思っている自分がいた。

今までにない、奇妙な感情だった。

彼と出会ったことで、確実に私の世界は変わっていった。 
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