夜風のような君に恋をした
だけどそんなとき、似た者同士の冬夜と出会って、そして少しずつ、果てしない闇が薄ぼんやりと色づいていったんだ。 

死にたがりの自分を必要としてくれる彼の存在は、気づかないうちに、私の中で特別になっていた。

歩きながら、どうしようもなく泣きたくなったけど、拳を握り込んで寸手のところで耐える。

死にたい気持ちとは違う、消えたい気持ちだった。

なにか大切なものが、ぽっかりと心の中から離れていった感覚。

冬夜と芽衣がつき合っていて、私には多分ただ同情してたってだけのことなのに、なんでこんなにも苦しいのかわからない。

そんなこと、私にはどうでもいいはずなのに。

そもそもこの世界なんて、残酷で、居場所なんてあるようでないってこと、充分すぎるほどわかっていたはずなのに――。
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