夜風のような君に恋をした
暗闇の中、ほんの少しだけ口元をほころばせる。

ここ最近は、家にいても、前ほどつらくはなかった。

似た者同士の雨月と、“今日あったいい出来事”を言い合っているだけで、ほんの束の間、自分がひとりだということも、世界が真っ暗だと言うことも忘れていられたんだ。

ある日突然、死にたがりの俺の前に現れた、死にたがりの女の子。

いつ途絶えてもおかしくないもろい関係なのはわかっていたはずなのに……。

思っていた以上に、自分の中で、彼女の存在が大きくなっていたことに気づく。

これは恋なんて大それたものじゃない。言ってみれば、運命共同体のようなもの。

そんな風に思っていたはずなのに――俺はたぶん、心のどこかで、彼女とのこの奇妙な関係がこの先も続くことを望んでいた。


失って初めて気づくなんて、俺らしい。

あれはきっと、俺にとって、生まれて初めての恋だった。
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