夜風のような君に恋をした
検温の結果は、37.5度。

無理はしない方がいいと保健室の先生に言われ、午前中で早退することになる。

熱のせいでぼうっとしたまま、私はひとり校門を出て、真昼の閑散とした電車に乗り込んだ。

体温が高いせいか、はたまた乗り慣れない真昼の電車のせいか、いつもとは景色が違って見える。

そして最寄りの駅までついたとき、ふと反対側の上りのホームに目をやった私は、驚きのあまりその場から動けなくなった。

何度も、見間違いかと思った。

どんなに目を凝らしても、やっぱり見間違いなんかじゃない。

――反対側のホームに、お兄ちゃんがいる。 

顔が見えないくらい深くニット帽を被っていて、見慣れない黒のパーカーを着ているけど、間違いなくお兄ちゃんだ。

ちょっとうつむき加減の立ち姿とか、ときどき首のあたりを掻く独特の癖でわかる。
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