夜風のような君に恋をした
お兄ちゃんのせいだと思っていたけど、それも違う気がする。

きっとこれは、偶然が重なった悲しい結果だったのだろう。

ううん、違う。結果なんかじゃない。

物事は常に動いていて、お母さんも、お兄ちゃんも、そして私も――いつだって変わることができるのだ。

きっと、こんな風なちょっとしたきっかけで。

「……わかった」

端的に答えた私は、いつものような作り笑顔は浮かべなかった。

気が利いた言葉も返せなかった。それでもお母さんは、満足したように笑顔を返してくれる。

本当のところははっきりとわからない。

人間の感情は、波のように起伏があって、お母さんは今笑っていてもまた泣き出すかもしれない。

でも人間って、そもそも弱い生き物なんだと思う。

だけど私はたぶん、それなりに、お母さんに大事にされているのだろう。
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