夜風のような君に恋をした
黙って私の話を聞いていた冬夜は、優しい笑みで、不安な私の心を受け止めてくれた。

「うん、そうだな。俺は死にたがりのどうしようもないやつだから、気の利いたことは言えないけど」

嘘だ。

冬夜はどうしようもないやつなんかじゃない。

気づかないうちにじわじわと、私を前へと導いてくれた。

たとえそれが、偽りの優しさだったとしても。

「でも、死にたがりの雨月よりも好きだけど、どっちかというと、そんな風に考えられる雨月の方が好きかな」

「え……」

冬夜の突然の告白に、一瞬理解が追いつかなくなった。

戸惑いはやがて恥じらいとなって、みるみる顔に熱が集まる。

自分の失言に気づいたのか、冬夜も我に返ったように真っ赤になって、目を泳がせた。

「あ、いや。そういう意味じゃなくて、人として……」

「うん、わかってる」

冬夜には、芽衣がいる。
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