夜風のような君に恋をした
佐原一輝、二十一歳。
名前だって一緒だ。
だけど今しがた霞のように消えてしまったお兄ちゃんは、どこからどう見ても、私と同じくらいの年にしか見えなかった。
まだ引きこもりになる前の、明るかった高校生の頃の彼にしか……。
「どういうこと……?」
胸の動悸が激しくて、うまく息ができない。
私は欄干に両手を預け、無我夢中で呼吸を整えた。
放心状態で、震える手元を見つめる。
そしてふと、欄干の塗装が、少しはがれていることに気づいた。
普段はそんな小さなこと、意識していない。
だけど以前冬夜といたとき、意外な塗装の新しさに気づいたことがある。
塗り替えたばかりなのだろうとそのときは気にもしなかったけど、不思議な現象を目の当たりにした今は、ああ、と心の奥で納得している自分がいた。
欄干に手を乗せたまま、おそるおそる前を向く。
名前だって一緒だ。
だけど今しがた霞のように消えてしまったお兄ちゃんは、どこからどう見ても、私と同じくらいの年にしか見えなかった。
まだ引きこもりになる前の、明るかった高校生の頃の彼にしか……。
「どういうこと……?」
胸の動悸が激しくて、うまく息ができない。
私は欄干に両手を預け、無我夢中で呼吸を整えた。
放心状態で、震える手元を見つめる。
そしてふと、欄干の塗装が、少しはがれていることに気づいた。
普段はそんな小さなこと、意識していない。
だけど以前冬夜といたとき、意外な塗装の新しさに気づいたことがある。
塗り替えたばかりなのだろうとそのときは気にもしなかったけど、不思議な現象を目の当たりにした今は、ああ、と心の奥で納得している自分がいた。
欄干に手を乗せたまま、おそるおそる前を向く。