夜風のような君に恋をした
まさか、まさか、まさか。

次の瞬間、私は自分の家に向かって、全速力で駆け出していた。

高架の階段を走り下り、夜の街を、無我夢中で駆け抜ける。

道行く人が、一目散に走る女子高生に不思議そうな視線を送っていたけど、そんなことはどうでもよかった。

永遠に続くのかと思うほど、闇は深い。

だけど、飲み込まれてはだめだ。

真実が知りたい。

たとえ、身を切るような、残酷な真実でも――。

息せき切りながら、ドアを開けて家の中に転がり込む。

学校指定のこげ茶色のローファーを脱ぎ捨て、いつものようにそろえることもせずに、玄関に駆け上がった。

洗面所のドアが閉まっている。そっとドアに耳を当てると、くぐもったような、洗面器の音が響いていた。

「雨月? 帰ったの?」
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