夜風のような君に恋をした
――『中学と高校が一緒だった友達よ』

お母さんの言葉を頼りに、中学の卒業アルバムを開く。

どうやら、学年は三クラスあったようだ。

個人写真を一組から順に探し、二組のページに、今よりもあどけないお兄ちゃんの姿を見つけた。

佐原一輝。

そう名前の書かれた茶色い髪の彼は、学ラン姿で、仔犬のように明るく笑っている。

そしてその右斜め上に、“彼”はいた。

ゴクリ、と乾いた唾を飲み込む。

市ヶ谷冬夜。
その名前の上で微笑んでいたのは、私が知っている姿と、そう変わりがない冬夜だった。

アーモンド型の一重の目に、整った鼻筋。

見慣れない学ラン姿。

こうやって多くの顔写真の中で見ると、際立ってきれいな顔をしている。

あまりにもきれいで、現実味がなくて、胸が苦しくなるほどに。

――ガチャ。

お兄ちゃんがお風呂のドアを開ける音が、階下から微かにした。
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