夜風のような君に恋をした
今日は木曜日だ。雨月には会えない。

だけどどうしても、昨日彼女が急に帰った理由が知りたくて、俺は居ても立ってもいられなくなる。

また嫌われたんじゃないだろうか?

昨日、俺に会えてよかったって、あんなにうれしいことを言ってくれたのに、何か傷つけるようなことをしたんじゃないだろうか?

放課後、無意識のうちに学校を飛び出し、家とは反対方面行きのホームに立っていた。

Y女子が、俺の通う高校の三駅先にあることを知っているからだ。

行ったことはないけど、電車に乗っているときに見えるY女子の看板に、駅名が書かれているのを見たことがある。

午後四時前、ちらほらと駅に向かうY女子の制服を着た女子たちの中を逆行した。

もしかしたらこの中に雨月がいるかもしれないと、Y女子の生徒とすれ違うたびに目で確認したけど、見当たらない。

まだ学校にいるかもしれないという期待が膨らんだ。

俺の学校は駅からさらにバスや自転車に乗らないと通いづらい距離にあるけど、Y女子は最寄り駅の徒歩範囲にあったのは幸いだった。

やがて、緑の中に煉瓦造りの英国風の校舎が佇む、広いキャンパスが見えてくる。

俺は鉄製のアーチ門が見える位置に立ち、門から出てくる女子ひとりひとり目を配っていった。

湧き水のように出てくる赤いリボンに灰色のプリーツスカートの生徒たちの中に、雨月の姿はない。

きりがなかったけど、それでも俺は必死に雨月を探し続けた。

「ねえ、あれ」

「K高の男子?」

そのうち俺に気づいた女子たちが、ヒソヒソと噂しながら、訝しげにこちらを見始めた。
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