夜風のような君に恋をした
俺は呆然としながら、女子の群れに紛れ、慣れない道を駅へと戻る。

――雨月という生徒は、存在しない?

じゃあ、あの雨月は誰だったんだ。

どうしてY女子の制服を着ていたんだ?

まさか、偽名? 

でもどうして偽名を使う必要があったんだろう?

ただ、どうしても、彼女が偽名を使っているようには思えなかった。

彼女の名前は雨月だって、俺の直感が言っている。

混乱した頭で、とりとめもなくこの不思議な現象の理由を考える。

だけど答えは出ず、俺は大きな不安を胸に抱えたまま電車に乗り、気づけば最寄り駅まで辿り着いていた。

家に帰ると、自分の部屋に直行し、制服姿のままゴロンとベッドに横になる。

窓の向こうから降り注ぐ夕日が、部屋の半分を燃えるような朱色に染めていた。

午後九時過ぎくらいに、頻繁にあの高架に行くようになったのは、ここ最近のことではない。
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