夜風のような君に恋をした
七章 夜明けの涙
「雨月、おはよう」

「おはよ、ママ」

朝。

昨夜泣きじゃくったせいで腫れた目元を見られないようにうつむきながら、私はお母さんのいるカウンターキッチンの前を通り抜け、ダイニングチェアに座った。

掃き出し窓から降り注ぐ、柔らかな朝の光。
 
お皿の上に盛られた、おいしそうな匂いのする、ハムとチーズのホットサンド。

テレビから聞こえる朝のお天気キャスターの明るい声。

今の私には、どんな情景も、匂いも、音も、残酷としか思えない。

冬夜の存在していないこの世界は、空っぽと同じだ。

「昨日、夜中まで音がしてたけど、遅くまで起きてたんじゃない?」

「うん、ちょっと寝れなくて……」

「そう。また体調崩しないように、ほどほどに休むのよ」

お母さんが、心配そうに声をかけてくる。

だけど今の私は、お母さんのその優しさに心奪われている余裕はなかった。

「うん、わかってる」

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