夜風のような君に恋をした
一章 夜に咲く
小さい頃は、夜が怖くて仕方がなかった。

『夜になったら、外にはこわいお化けが出るんだぞ。本当だぞ。おれ、何回も会ったんだからな』

お化けが行列を作って夜の街を歩いている絵を見せながら、幼いお兄ちゃんが怖い顔でそんな脅しをかけてきたからだ。

当時お兄ちゃんは、『妖怪大辞典』にハマっていた。

まだ三歳だった私は震え上がり、日が落ちたら一歩たりとも外に出なくなった。

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