夜風のような君に恋をした
あの夜、俺を突き飛ばした雨月が、ヘッドライトの鮮烈な光に包まれた姿をはっきり覚えている。

だけどその直後、黒い影が君に重なって……。

――ドンッ! 

――バキバキッ!

――キキィィーー!

直後、トラックがガードレールにぶつかる音と、けたたましいブレーキ音だけが、俺の世界を支配した。

ようやく喧騒がやんだ頃、ガードレールを打ち砕いて歩道に乗り上げているトラックと、目の前に倒れている人に気づく。

茶色い短髪に、同じK高の制服。見覚えのある姿に、俺は顔面蒼白になった。
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